1.はじめに
香港に駐在すると、毎週の様にボーダーを越え、中国・香港・マカオを往復することになります。そんな訳で、ボーダーを越えることに、かなり不感症になってしまいますが、考えてみれば、これ程頻繁に入出国を繰り返すのは、かなり特殊な環境と言えます。
これは、香港・マカオのビジネス環境が、中国内地との一体化を深めていることによるものですが、その動きを象徴する様な工業区が、今回ご紹介する「珠海マカオ・クロスボーダー工業園区」です。この特殊な工業区は、どの様な運営が行われているのでしょうか。税制・外貨管理等は、どの様に管理されているのでしょうか。
今回は、中国で唯一の、ボーダーを跨いだ工業園区を紹介します。
2.珠海マカオ・クロスボーダー工業園区の特徴
同工業園区は、2003年12月15日に国務院の認可を受けています。
園区の面積は、40万平方メートルで、その内29万平方メートルが珠海管轄区・11万平方メートルはマカオ管轄区となっています。ここで疑問が生じるのは、マカオと中国内地は、現在のところ、税制も外貨管理も異なっている為、この2地域をどう調和させるのか、という点でしょう。
実は、工業園区の間には川が有り、これによって珠海側とマカオ側が物理的に隔離されています。これにより、マカオ側の企業と珠海側の企業は、明確に区分され、それぞれの地域の制度(税制・外貨管理・その他の制度)が適用されます。
両管轄区域は、川に架かる橋で繋がっていますが、往来に際しては、通関手続が必要となります。
ただし、通関手続は、出境時の一回のみと、通常の手続(入出境時の二回)よりは簡素化が期待できます。
3.税制・外貨管理の特徴
上述の様に、クロスボーダー工業園区は、マカオ側と珠海側では異なった管理制度が適用されます。両区域の特徴を簡単に紹介すると、以下の通りとなります。
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珠海側 |
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珠海側では、中国内地の税制が適用されます。中国の企業所得税率は33パーセントですが、珠海は経済特区であり、外資企業の場合は、業種を問わず15パーセントの優遇税率が適用されます。
この為、同工業園区に登記された外資企業に対しては、15パーセントの企業所得税率が適用されます。
注)現在、中国では外資企業所得税法の改定が検討されており、これが実現すれば、将来的に適用される税制が変更される可能性があります。
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| ・ |
同工業園区は保税地域となっており、外貨・通関管理も保税区に準じた対応が取られます。但し、中国国内貨物を同工業区に搬入した際に、増値税の輸出還付が適用される点は、物流園区・輸出加工区と同様であり、保税区以上の優遇措置と言えます。
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マカオ側 |
マカオは、外貨管理が原則として自由、自由港(関税無し)という、香港同様柔軟な管理制度を採用しており、同区域も、同一の制度が採用されます。
また、法人税は、2〜15パーセントの累進課税となっています。
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4.誘致状況
同区域は、マカオ・珠海各区域で、個別の誘致が行われています。
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珠海側 |
管轄の29万平方メートルを、工業区域(14万平方メートル)・商業区(4万平方メートル)・中継貿易区(2万平方メートル)・その他の地域に分けています。
その半分を占める工業区には、既に12社の進出が決定し、6割の面積が成約済。他の地域に付いても、現在商談が進められています。
進出企業の主流はマカオ企業のようですが、やはり、中国内地での労働力の確保、保税措置の享受、マカオに輸出する際の増値税コストの引き下げ等を期待してのものと考えられます。
注)中国では、増値税の輸出還付に、一定の掛け目が生じる(掛け目は商品によって異なる)。増値税の不還付額の計算は、ベースが輸出FOB価格となる為、マカオに対する輸出を前提とすると、中国の他の開発区で生産してマカオに搬入するよりも、同開発区で生産した方が増値税の不還付額が少なくなる。
これは、同開発区が保税区域であること、中国国内貨物を園区に搬入した段階で、増値税の輸出還付が実施される為、不還付額のベースが製品ではなく原材料になる為。
尚、同工業区の地価は、工業用地(使用期限50年)で、600元/平方メートルとなっており、通常の開発区よりは高額です。
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マカオ側 |
管轄の11万平米に対して、キャパシティを超える67件の応募があり、審査の結果、26件が進出を認められています。
現時点では、新規の誘致は行われていません。 |
この通り、狭い面積ながら、順調に誘致が進む工業区ですが、これは一種の実験的な措置といえます。同工業区の今後の実績に応じて、更なる両区域の融合・ボーダーを越えた工業区の新設等が検討されていくことでしょう。
今月のこぼれ話
今年は雨がよく降ります。
今回の珠海取材の日も大雨。香港をフェリーで出発した時点から大雨で、珠海に到着しても激しい雨。写真撮影が危ぶまれましたが、直前で何とか小雨となったので、取材を強行しました。
ただ、雨の日に取った写真は、暗くて印象が悪くなってしまうので、できれば使いたくないものです。特に、保税区管理委員会の方が、大変親切に対応してくれただけに、大変申し訳ないのですが、締め切りの関係上、やむを得ず。
ただ、同工業区はまだ本格的な開発が行われていない段階。順調に誘致が進む同開発区を、もう少し時間がたってから、また紹介したいと思います。 |
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園区より珠海市を臨む
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園区珠海側よりマカオ側を臨む
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珠海側園区に建設中の工場
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珠海側園区
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